創作童話2




ちーちゃんとたんぽぽ

 真っ白い仔猫のチーちゃんは、都会のはずれに住んでいます。チーちゃんのお散歩コースはいつも同じです。
春のあたたかい日、いつもの道を歩いていると、道の端っこに黄色いものを見つけました。
「なんだろう?」
 かけ寄ってみるとアスファルトのわれめからたんぽぽが顔を出しています。
「わぁ、かわいいお花!」
 チーちゃんはうれしくなって、ちょんと鼻をつけてみました。
「うーん、春の香り!」
 チーちゃんは、お花のそばでひなたぼっこをしました。
「ここはあまり車も通らないし、道の端っこだから、お花さん、人に踏まれないね。」
 チーちゃんは安心してお家に帰りました。

 それから毎日、晴れた日はお花のとなりでひなたぼっこをしました。雨の日はたいてい外に出ないのですが、お花が気になるのでちょっとだけ見に行きます。そのうちに、子供が話しているのを聞いて、その花が「たんぽぽ」という名前だということを知りました。
 チーちゃんは、いつものようにちょんと鼻をつけて、たんぽぽに話しかけました。
「たんぽぽさん、こんにちは! ぼく、たんぽぽさんの歌を作ったよ。」
♪たんぽぽさん、たんぽぽさん、ちっちゃくてかわいいたんぽぽさん♪
 そよ風にゆれるたんぽぽは、まるでチーちゃんの歌を聞いて喜んでいるようでした。

 ある日、チーちゃんが行ってみると、たんぽぽは花を閉じていました。
「たんぽぽさん、起きて! 朝だよ!」
 大きな声で呼んでみました。
「どうしたんだろう?」
 いつもより長くそばにいましたが、たんぽぽは眠ったままでした。
「明日は元気になってね……。」
 何度も振り返りながら、チーちゃんはお家に帰りました。

 次の日、チーちゃんは早起きをして、たんぽぽのところへかけて行くと、花はしぼんで小さくなっていました。
「たんぽぽさん! たんぽぽさん!」
 いくら呼んでも、もう花は開きません。
 チーちゃんは、しばらくたんぽぽを見つめてから、そっとお家に帰りました。
「あんなにきれいだったのに……。」
 次の日も、その次の日も、悲しくてお散歩に行けませんでした。

 何週間かたちました。チーちゃんは久しぶりに外に出てみました。
「もう、たんぽぽさんに会えないんだなあ……。」
 さびしい気持ちで歩いていると、黄色いたんぽぽが咲いていたところに、何か白いものが見えます。そうっと近づいてみました。
「わぁ、真っ白でふわふわして、まあるい花が咲いてる!」
 うれしくて鼻をちょんとつけました。すると、白い花はふわっと浮かび上がりました。
「あっ!」
 そよ風に乗って、花が飛んでいきます。
「たんぽぽさん待って! どこにも行かないで!」

 あわてて飛びつきましたが、白い花はもっと小さく分かれて、あっちにもこっちにも飛んでいきます。チーちゃんはどうしていいかわからなくて泣きたくなりました。


 その時、近くで女の子の声がしました。
「見て! きれいな綿毛!」
「ああ、あのたんぽぽだね。」

「おじいちゃん。綿毛って、たんぽぽの種なんでしょう?」
「そうだよ。たんぽぽはね、花が終わると綿毛になって、種を風に運んでもらうんだ。そうして、いろんなところでまた花を咲かせるんだよ。」
「ふうん。1つの花からたくさんの花が咲くの? たんぽぽってすごいね!」
 女の子とおじいさんは、話しながら行ってしまいました。

「えっ? 白い花じゃないの? また、黄色いたんぽぽさんが咲くの?」
 チーちゃんはへたっとすわりこんで、空を見上げました。
「そっか。また、たんぽぽさんに会えるんだ!」
 チーちゃんは綿毛が飛んでいったほうに向かって歩き出しました。
 その日から毎日、チーちゃんはいろいろな道を散歩するようになりました。風が運んだ、たくさんのたんぽぽの花に会うために。

おわり






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