創作童話3




みいちゃんの願い

 仔猫のみいちゃんは、小さい時におじいさんに拾われました。おばあさんが名前を付けてくれました。
「今日がおまえの誕生日だよ。これから一緒に、仲良く暮らそうね。」
二人は優しく撫でてくれました。

 子どもがいないおじいさんとおばあさんは、みいちゃんをとてもかわいがってくれます。昼間は縁側でおばあさんとひなたぼっこをし、夕方はおじいさんと遊び、そして夜は、二人の間で眠ります。みいちゃんは、おじいさんもおばあさんも大好きでした。

 ぽかぽかとあたたかいある冬の日、みいちゃんはちょっと遠くの公園まで遊びに行きました。
「おばあちゃん、私が持ってあげる。」
 振り返ると、買い物帰りのおばあさんと小学生くらいの女の子が仲良く歩いています。女の子は小さなからだで、大きなスーパーの袋をかかえて得意そうです。
「いいなあ、人間の子どもは……。猫じゃ、なんにもお手伝いできない。私も人間の子どもになれたらいいのに……。」
 みいちゃんは、いつも優しくしてくれるおじいさんとおばあさんになにもしてあげられないので悲しくなりました。

 翌日はみいちゃんの誕生日でした。おじいさんとおばあさんは、プレゼントのマフラーを買いに出かけています。みいちゃんは日あたりのいい縁側で、うとうとしていました。
「みいちゃん、みいちゃん!」
 はっとして目を覚ますと、目の前に虹色の杖をもった妖精がいます。
「こわがらないで! 今日はみいちゃんの誕生日だから、なんでも願いをかなえてあげる!」
 妖精はにっこり微笑み、みいちゃんに優しく話しかけました。
「えっ? 本当?」
 人間の子どもになりたかったみいちゃんは大喜び。
「人間の子どもにしてください。」
 妖精が虹色の杖をひとふりすると、七色の星が降ってきました。それに触れると、みいちゃんはたちまち小学生の女の子になりました。喜んで、跳ね回るみいちゃんに妖精が言いました。
「みいちゃん、いい? このことはだれにも言っちゃだめよ。もし、しゃべったら、みいちゃんの一ばん大切なものをもらうからね。」
「わかりました、妖精さん。」
 みいちゃんは、きっと二人とも喜んでくれるだろうと思いました。

 帰ってきたおじいさんとおばあさんは、家の前に小さい女の子がいるのでびっくりしました。女の子はにこにこしながら二人に話しかけました。
「おじいさん、おばあさん、私にお手伝いをさせてください。」
 二人とも最初は戸惑いましたが、外は寒いのでとりあえず一緒にお昼ご飯を食べることにしました。みいちゃんは、台所からお料理を運んだり、おばあさんが洗ったお皿を拭いたりしました。台所でお手伝いをするみいちゃんに、おばあさんが楽しそうに話します。
「うちにはね、とってもかわいい猫がいるのよ。お外に行ってなかったら一緒に遊べたのにねえ。」
 それから、書斎でおじいさんと本の整理をしました。おじいさんは、みいちゃんが渡した本を本棚に入れながら言いました。
「おじょうちゃん、猫は好きかい? うちにはみいちゃんといって、とても利口な猫がいるんだよ。」
 みいちゃんは、せっかく人間の子どもがいるのに猫のことばかり話す二人を、とても不思議に思いました。

 居間の掘りごたつに入って三人でお茶を飲んでいると、柱時計がボーン、ボーンと六回鳴りました。六時です。いつの間にか雨が降りだし、外は暗くなっていました。
「変だわ……。暗くなってきたのにみいちゃんが帰らないなんて……。もしかして、車にでもはねられたんじゃ……。」
 おばあさんの顔は真っ青です。
「馬鹿なことを言うんじゃないよ。きっと近くで雨宿りをしているんだ。私がちょっと見てくるから、心配しなくて大丈夫だよ。」
 おじいさんは、優しく言いながら立ち上がりました。みいちゃんは慌てておじいさんをとめました。
「おじいさん、おばあさん、外は寒いよ。私がいるじゃない。猫はお手伝いできないんだよ。」
 おじいさんはゆっくりコートをとると、静かに言いました。
「おじょうちゃん、そりゃ、猫は買い物に行ったり掃除をしたりはしないけど、みいちゃんは私たちの大切な子どもなんだよ。おじょうちゃんのお父さん、お母さんにとっても同じだよ。おじょうちゃんのことを今ごろ探しているはずだ。さあ、一緒に帰ろうね。」
 本当のことを言おうと思ったみいちゃんは、突然、妖精の言葉を思い出しました。
「もし、しゃべったら、みいちゃんの一ばん大切なものをもらうからね。」
 あっ! 私の一ばん大切なものって、おじいさんとおばあさんだ。どうしよう……。本当のことを話せない!

 おじいさんは、女の子になったみいちゃんを交番まで送ってから、冷たい雨の中を探し回っています。おばあさんは、家で心配しています。
「なんてことをしてしまったんだろう! 妖精さんごめんなさい。私を許してください。おじいさんとおばあさんを悲しませないでください。お願い! 妖精さん!」
 みいちゃんは、泣きながらお願いしました。すると、空から星が降ってきて、みいちゃんはまた仔猫に戻ることができました。

「妖精さん、どうもありがとう。」
 みいちゃんは、急いでおじいさんのところに走っていきました。
「ああ、みいちゃん、よかった。無事だったんだね。」
 おじいさんは、みいちゃんを強く抱きしめました。家のそばまでくると、おばあさんがころがるようにして出てきました。
「みいちゃん、もうっ、心配かけて……。でも、よかった、よかった……。」
 おばあさんは泣きながらみいちゃんを抱きしめました。なんにもできなくてもかわいがってくれるのです。
「みいちゃん、お誕生日おめでとう。」
 おじいさんとおばあさんが声をそろえて言いました。
「あっ、雪!」
 おばあさんは、買ってきたばかりのマフラーでみいちゃんをくるみました。みいちゃんは、大好きなおじいさんとおばあさんのあたたかい愛に包まれ、いつまでも雪を見ていました。

 翌朝、みいちゃんが起きてみると、空は青く晴れわたり、庭一面まっ白な雪で輝いていました。今日もみいちゃんは、昼間は縁側でおばあさんとひなたぼっこをし、夕方はおじいさんと遊び、そして夜は二人の間で眠ります。みいちゃんはとっても幸せで、もう人間の子どもになりたいとは思いませんでした。
    


おわり






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