創作童話4




灰色猫のメイちゃん

 灰色猫のメイちゃんは、夜になるとお散歩に出かけます。一緒に住んでいるおばあさんが布団に入る十二時からが、メイちゃんのいちばん楽しい時間です。

「あら、トムおじさん。こんばんは」
「やあ、メイちゃんもお散歩かい?」
「そうなんです。昼間は人が多くって……」
「そうだよなあ。夜の方が静かだもんな。ところで、むこうの空き地で町内会をやるんだけど、メイちゃんもくるかい?」
「ううん、わたしはまだ子供だからやめておきます」
「そうかい。じゃあ、気をつけてな」
「はい。みんなによろしくね」
 三毛猫のトムおじさんは、大きな体を揺すりながら行ってしまいました。

「今日も駐車場になにか落ちているかしら?」
 メイちゃんは近くの駐車場に行ってみました。昨日は大きなボールが落ちていたので、近所のたまちゃんを誘って、何時間も遊びました。
「あっ、あそこでなにか光ってる!」
 メイちゃんは車の下にもぐりました。
「きれいなイヤリング! 貝がらもついてる!」
 キラキラしてきれいな物が大好きなメイちゃんは、顔を近づけてゆっくり眺めました。

「そういえば、裏のアパートのお姉さんが、貝がらのイヤリングつけていたなあ……」
 お姉さんは猫が好きなので、メイちゃんと会うといつも撫でてくれます。メイちゃんはそっとイヤリングをくわえて、アパートの方へ歩き出しました。こわさないように、落とさないようにと、よおく注意しながら歩いたのでなかなかつきません。ちいさなメイちゃんは、途中でちょっと休みました。

「ふうっ。こんなに遠かったかなあ?」
 メイちゃんが不思議に思いながら下を見ると、月明かりに照らされて、イヤリングの桜貝がピンク色に光っていました。
「わあ、なんてきれいなの!」
 メイちゃんはうれしくなりました。
「こんなにきれいなの見たことがないわ!」
 メイちゃんはまるくなって、しばらくの間、うっとりと見つめていました。

「ようし、あとちょっとだからがんばろうっと!」
 メイちゃんはまた、イヤリングをくわえて歩き始めました。やっとアパートの前にたどり着きました。お姉さんの部屋は二階の一番奥です。メイちゃんは一気に階段を走りあがりました。そして、お姉さんの部屋の前に、そっとイヤリングをおきました。
「はぁ、よかった。こわさないで持ってくることができた!」
 ちょっとの間、イヤリングを見つめてから、メイちゃんはまた駐車場に戻りました。

「あっ、たまちゃん!」
 お友達のトラ猫のたまちゃんが遊びに来ていました。
「メイちゃん。いいもの見つけたよ!」
 たまちゃんは、ぽーんと毛糸だまを投げてよこしました。
「わーい。あそぼ!」

 メイちゃんとたまちゃんは、今日も何時間も遊びました。
「たまちゃん、明日も遊ぼうね」
「うん。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
 それぞれ、自分のおうちへ歩いていきました。

 メイちゃんは自分のおうちの前まできましたが、中には入らないで道の真ん中にまるくなりました。
「今だけ私の場所よ!」
 だれも通らない道の真ん中で、ゆっくりできるのはなんて楽しいんでしょう。メイちゃんは、「さっきのイヤリングきれいだったなあ」とか、「おばあさん、昨日はおまんじゅうを三個も食べてたなあ」とか、色々なことを考えてうとうとしました。灰色猫のメイちゃんは、月明かりで銀色に光って見えました。

 だんだん、空が明るくなってきました。メイちゃんはアパートの前に行ってみました。OLのお姉さんはいつも朝早く出かけます。お姉さんの部屋のドアが開きました。
「あら、私のイヤリング!」
 お姉さんは、あわててイヤリングを拾うと、部屋の中に向かって言いました。
「ねえ、私がこの前なくしたイヤリングが、ドアの前にあったの! 気に入ってたから、ずっと探していたのよ」
「よかったね。 ほら、早くしないと遅刻だよ!」
 奥からお母さんの声がしました。
「はーい。いってきます!」
「いってらっしゃい」

 お姉さんがうきうきと階段を降りてきました。
「あら、猫ちゃん。おいで」
 メイちゃんの頭を撫でながら、お姉さんはうれしそうに言います。
「猫ちゃん、私のお気に入りのイヤリングが見つかったのよ。なんてうれしいんでしょう!」
「みゃあ」
「まあ、猫ちゃんも喜んでくれるのね。ありがとう。じゃあ、いってきます!」
「みゃあ」
 お姉さんは、スキップしながら出かけていきました。
「よかった。やっぱりお姉さんのだったんだ」
 メイちゃんもスキップしながら、おうちに帰りました。




おわり






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